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閑話究題 XX文学の館 駄文雑録

雑誌蒐集遍歴 − その後


第九回に「雑誌蒐集遍歴」を書いてから6年程経った。本業多忙でサイトの更新が出来なくなったのは事実であるが、多少余裕が出来てきても2年以上のブランクから立ち直る為のモチベーションが維持出来ない上、生来の怠け癖が重なって本格的に復帰出来ないでいる。完全復帰には今暫くの時間が必要と思われるが、蒐集自体は細々と続けており、雑誌に関してもそれなりに集まって来た。会員制雑誌の総目次を公開している[雑誌資料]」の対象雑誌の範囲をもう少し広げて見ようと考える程度にはなっている。そんな状況下で、その後の蒐集状況を書いて見る。

戦前の【変態資料】(文芸資料編輯所)の一冊が欠けた状態のままであることを前回書いたが、それから程なくしてあまり状態の良くないものを古書展で見掛けて購入した。コレクションとするには躊躇する状態ではあったが、総目次のその号だけ抜けているのは何とも締りがないので、手に入れた。往々にしてあることだが、一度手に入ると次から次に同じものが見つかり、現在はそれなりの状態のものがコレクションに治まっている。

もう無理かもしれないと諦めていた【カーマスートラ】の別冊は、一口ものをまとめて買った中に見つかった。旧蔵者は発禁本コレクターのように後で蒐集した人ではなく、昭和の初期にリアルタイムで購入していた人なので、元々は全冊揃っていたものと思われるが、その中に他の号はなかった。これ程の単行本をコレクションしていて、と言う内容であるにも拘らず雑誌が一冊もないというのは考え辛く、恐らく雑誌だけ別に処分されてしまったが、当該別冊が誌名も何もなく、唯「別冊」としか書かれていないので、見落とされたのではないかと推察される。最初にこれを見た時、この一口ものを入手する数ヶ月前に表紙が破れて取れたものを見せられて、正体を尋ねられたことがあり、答えられなかった記憶が甦って来た。「蚤の自叙伝」が載っていたことからかなり興味を抱いたのであるが、そこまで確認していて思いが至らなかった。まだまだ未熟であると痛感すると同時に、先に書いたように、出る時は続けて出るものである、と云うことを再認識したしだいである。

戦前の会員制のものでは【匂へる園】が何とか集まった。但し、以前から持っていた臨時増刊の『ロップス研究』の状態が良くないので買い替えたいのであるが、出難いことと、他のダブりが多く(それだけ散財している)、財布が肯いてくれない。 【エロ】(猟奇社)、【猟奇】(日本文献書房)は見掛けることが極端に少ないので端から諦めていたのであるが、最近手に入れた。特に【エロ】世界文学研究会から出ているので、是非にも見てみたかったのであるが、初めに第2、3合併号が日本の古本屋で見付り、合併号の改訂版も同じく日本の古本屋で買った。単行本ならばいざ知らず、発禁になった雑誌の改訂版を出すというのも珍しく、日本の古本屋で見つけた時には書影まであり、表紙のデザインは先に購入したものと同じであったが、「十月號十一號 續いて発禁 改訂十二月號」と朱書きされた箇所が目立った。合併号は最初から伏字があったので、判子か何かを後で押しただけのものかとも思ったが、価格的にダブっても良いという思いで注文した。来たものは、朱書きの部分は印刷で中身もさらに伏字が増えてる改訂版であった。その後、程なくして古書展の目録で創刊号を見つけた。

前回「どうしても手に入れたいのだが」と書いた【雅俗】三冊であるが、2号と3号をまとめて入手した。譲り受けた表紙が取れている一冊は2号なので、2号がダブリ創刊号が未入手のままである。ガリ版刷りで自称30部限定の秘密出版雑誌が入手出来るとは思ってもいなかったのであるが、表紙が欠けているとは云え(書名とか絵がある訳ではなくただの白紙であるが・・・)ダブルことになろうとは更に想像外の出来事であった。このことは、時間と多少の運さえあれば、如何にもならないものはない、と意を強くしたと同時に、残りの創刊号だけ入手するという状況は考え辛く、運良く架蔵出来たとしても、またダブリが発生しそうな予感がする。

バラでは見掛けるが揃いそうに無いと書いた戦前の【でかめろん】(風俗資料研究会)は某古書店の自家目録で揃いを見付けて入手。前述した【匂へる園】も実際は臨時増刊を除く全冊の揃いが出たので手に入れた。これは何回か目録に載っていて売れ残っていたものであるが、電話ではなく、葉書で注文した。その為、バラで購入した分が総てダブる結果になった訳である。【古今桃色草紙】も揃いが出たことがあるのであるが、財布と相談した結果、これは注文しなかった。最終号は入手したので後一冊、気長に待つことにした。公刊誌では、これもあまり見掛けることはないが、【絵入百物語】(風俗資料研究会)が蒐集対象の仲間入りした。揃いではなかったが、以前から某古書店の Web 上に出ていたものである。財布が「うん」と云ってくれなかったことと、この価格では売れてしまうことはないであろう、と云う楽観的な気持ちとが相まって見送り続けていたのであるが、ある時意を決して注文した。欠けているのが臨時増刊(2巻2号)と判明し、目下探索中である。このサイトには他に【犯罪公論】(四六書院)の揃い40数冊も出品されており、信じられないような値付けがされていたが、【絵入百物語】を購入した後、暫くして売れていた。館主と同じように様子を見ていた方が危機感を抱いて購入に踏み切ったのではないかと勝手に想像している。

追記:この文章を書いている間に一寸まとまったものを入手、中に戦前戦後の刊行案内の束があった。文芸市場社関連などの本来欲しい未知のものは混ざっていなかったが、今まで手元に無かった幾つかの刊行案内があってまずまずの収獲と云えるものである。その中に雑誌が一冊紛れ込んでいた。探索中であると前述した【絵入百物語】の臨時増刊である。束を整理していて最初に目に入った時は【絵入百物語】の刊行案内かと思ったのであるが、中を見てビックリ。この一事だけで元を取り戻したとは云い難いが、古書の世界には往々にしてこのような偶然があるので、一度嵌ると抜け出すのが困難である。よく云われるように、愉しんでいるのか苦しんでいるのか・・・

今現在悩んでいるのが【風俗資料】(風俗資料研究会)である。それこそ何時でも買えそうな雑誌と思っていたが、甘くはなかった。抜けているものが埋まらない。実は日本の古本屋に揃いは在ったりするのであるが、これまた懐が頷いてくれない。残りは2冊であるが、その内の一冊はかなり難しいことが予想できる。悩ましい・・・

6年も経てばそれなりに蔵書も増えるが、目的の書籍を探すという意味で当時と大きく変わったのは、日本の古本屋の充実ぶりであろう。探求書の探し方、入手の仕方に就いては別に述べる機会があると思うので詳述はしないが、以前では考えられない程探しやすくなっている、と云うのが実感である。蒐集の初期に伏字表の一部も付いていて、割りとまとまって入手した【グロテスク】(文芸市場社他)をそのままにしていたのであるが、最近抜けている分の探求を再開した。2巻6号は別にして、殆ど無いと云われていた四六判の「臨時増刊」(昭和5年1月)がいとも簡単に、しかも複数日本の古本屋で見付ったことがきっかけである。一冊も持っていなかった【猟奇画報】(日本風俗刊行会)を必要に迫られて集めることになったのであるが、美醜を別にすれば、あっという間に揃ってしまった。揃いは一点だけ在ったが懐が拒否したので除き、売切れてしまいました、と云われた店が2軒あったにもかかわらずである。元々珍しいと云う程の雑誌ではなかったが、それでも日本の古本屋畏るべし、の感はある。勿論価格の問題はあるし、タイミングが悪ければ先に取られてしまうこともあろう。珍しいものが見付け難いのは目録と左程変わりはない。しかし、時間さえあれば何時でも検索できることは有難い。さらに6年経った後の蒐集状況がどうなっているかが楽しみである。


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