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閑話究題 XX文学の館 雑誌資料

稀書


一般に戦後の会員制特殊雑誌を扱う場合、本誌は必ずその仲間に入る。しかし、特殊雑誌が地下流通の雑誌のことを指すのであれば、本誌がその候補になるのか否かは微妙な所である。何故ならば、本誌は国会図書館に納本されているからである。書店で販売されていなくとも、国会図書館に納本されていれば普通は地下本扱いはしない。但し、納本されているのは全十冊中六冊のみである。ここが微妙な点である。【生活文化】【造化】のように完全な法規無視の雑誌と違い、江戸文芸を中心とした趣味誌に近いものである。但し、扱っているものが江戸期の軟派物が中心であるが故に、問題を起こしやすい本質は内在していた。現在であれば何の問題もなく刊行可能であると思われるが、当時はやはり問題を起こしている。従って、当館では従前通り本誌を地下流通の雑誌として扱うことにする。

本誌の特徴の一つは、バレ句集として著名な「末摘花」ではなく、「柳の葉末」を取り上げたことであろうか。川柳と言うよりは狂句集であるため、「末摘花」以上のバレ句集であるが、柳味に乏しいため余り顧みられることのなかったものである。後に、同山房から単行本として刊行しており、輪講ではなく、放談と言う形を取っている所からも、宣伝を兼ねていたのかも知れない。

同じ、古川柳でも岡田三面子の遺稿である「日本史傳川柳狂句」を連載している点は見逃せない。終戦間際にガリ版刷りで四十部程度頒布されただけの稀覯資料である。後に文庫版で二十五冊(本文のみ)にもなった大著である。従って、小雑誌十冊程度の連載では高が知れているが、活字化の先鞭を付けたという意味では特筆して良いであろう。同じ遺稿である岩田準一の男色文献書誌、「後岩津々志」の連載も強調すべき点である。宮尾しげを「小咄年表」も含め、たった十冊で廃刊になるには惜しい雑誌といえる。


稀書(全十冊)
判型B6判 書影
編集第一組合 稀覯文献研究會
発行森山太郎
発行所芋小屋山房
刊年昭和二十七年一月二十日 〜 昭和二十八年八月二十日

第一冊
頁数64頁
刊年昭和二十七年一月二十日

目次
創刊の辞辭 <發刊のことば>表紙裏
東西好色藏書票 その一 S.SAITOH
F.ROTIC
1
江戸歌舞伎團扇繪集 壹
  • 鎌倉風新玉曾我
  • 大飾徳曾我
  • 初花隅田川
  • 菜花隅田川
解説 木村捨三
   宮尾しげを
2
當世ニゼ本つくり 千里 巖6
仕掛本漫言 水曜莊主人8
珍稿漫考
  • ちゃぶや女給の日記
齋藤昌三10
新うそっぷ咄12
岡田三面子先生遺稿
  • 日本史傳川柳狂句
    • はしがき 〜 鶺鴒(続)

13
艶本類集
  • 小野徒玉莖嘘字盡(紹介)
南名散史21
日本猥談ノート38
小咄年表(1)
  • 笑話 水の月(文化5)
     〜花競芝かん噺(文化11)
宮尾しげを39
未翻刻小咄集 一
  • 新板しかた噺 浪速みやげ 文化五年
註解 宮尾しげを47
艶本書目集成(1) 稀覯文献研究會編57
日本 艶本目録(一)
  • あなおかし 〜 飛鳥山

61
奇書研究室63
編集後記裏表紙裏

第二冊
頁数64頁
刊年昭和二十七年二月二十五日

目次
(巻頭の言葉)表紙裏
東西好色藏書票 その二 いも小屋山房
EMILE.LENOBLE
1
江戸歌舞伎團扇繪集 貳
  • b迎賑源氏
  • 残雪呆曾我
  • 初買和田宴
解説 木村捨三
宮尾しげを
2
大笑い考 藤澤衛彦6
因州いろは9囲
考証随筆
  • 詰め紙とはさみ紙
中野榮三10
後岩津々志
  • 序 江戸川亂歩 12
  • 編纂要旨
  • 伊勢物語 〜 安撰和歌集
遺稿 岩田準一
  • 遺稿 岩田準一
  • 江戸川亂歩 12


  • 11
  • 12
珍稿漫考
  • 不死鳥の二雄
齋藤昌三21
艶本類集
  • 春色忍ケ岡(紹介)
南名散史26
風流放談 柳の葉末 第一夜
  • 藤澤衛彦 齋藤昌三
  • 宮尾しげを 中野榮三
  • 芋小屋主人

36
川柳相模下女 加山三郎43
日本史傳川柳狂句 第二回
  • 鶺鴒(承前)
     〜 天の岩戸(続)
遺稿 岡田三面子46
小咄年表 第二回
  • 花競璃寛噺(文化11)
     〜 落噺 笑たけ(文政3)
宮尾しげを39
書目集成追記63
探書頁63下
編集後記裏表紙裏
死亡通知 青山倭文二裏表紙裏囲

第三冊
頁数60頁
刊年昭和二十七年三月二十五日

目次
(巻頭言)表紙裏
口絵 大焦熱開地獄折込別丁
全盛七婦久腎(全文復刻)1
考証随筆
  • お馬と經帯
中野榮三20
なぞなぞづくしゑがほのことぶき20下
祕藥雜録22
年中交合故事(圖繪復刻)25
日本 艶本目録(二)
  • 遊女懐中洗濯 〜 淫書開好記
研究會編56
芋小屋だより60
探書頁60下
玉くしげに就て裏表紙裏囲
編集後記裏表紙裏

第四冊
頁数64頁
刊年昭和二十七年四月二十五日

目次
口絵 交合之図 伝 池大雅表紙裏
東西好色藏書票 その三 T.SAKAI
JOAN.BAVCIS
1
江戸歌舞伎團扇繪集 その三
  • 街道一伊豆春駒
  • 長生殿常櫻
  • 時津風入船曾我
  • 楪姿見曾我
解説 木村捨三
   宮尾しげを
2
カストリ雑誌浮沈譚 千里 巖6
陰名「話乃泉」 高橋鐵8
動物自慰考 水曜莊主人11
珍稿漫考
  • 軟談五題
齋藤昌三14
陰名語彙(サの部)16
新板 六七三四八八大寳惠20
後岩津々志 第二回
  • 井蛙抄語 〜 醒睡笑(続)
遺稿 岩田準一22
日本史傳川柳狂句 第三回
  • 天の岩戸(承前)
     〜 謡曲諏訪(続)
遺稿 岡田三面子32
新謎わらひふくろ44
小咄年表 第三回
  • 咄の藏入(文政3)
     〜 落噺 年中行事(天保7)
宮尾しげを46
日本猥談ノート(二)58
茶屋辭典58下
なぞなぞづくし・ゑがほのことぶき 答63下
推薦圖書
 好色三代傳奇書
64下
編集後記裏表紙裏
年中交合故事・正誤裏表紙裏

第五冊
頁数80頁
刊年昭和二十七年五月二十五日

目次
口絵 伝 池大雅表紙裏
東西好色藏書票 その四 芋小屋山房
JL VERITIERO
1
江戸歌舞伎團扇繪集 その四
  • 水木辰之助にせ五郎の圖
  • 通b 曾我
  • 残雪 曾我
  • 市川八百藏大首繪
解説 木村捨三
   宮尾しげを
2
續當世ニセ本つくり 千里 巖6
後塵記 魔山人8
女體 岡部桂一郎11
風流放談 柳の葉末 第二夜
  • 藤澤衛彦 山路閑古
  • 中野榮三 芋小屋主人

36
(読者より)
  • 内診は二本指で
  • 動物自慰考に就て

17囲
衆道奥義18
あなさがし 柳の葉末 山崎甚次郎18囲
艶本類集
  • 穴相撲四十八手

21
陰名語彙(キ・クの部)35
日本猥談ノート(三)40囲
日本艶本目録(三)
  • 宇意冠(笑本)
     〜 艶情玉櫛笥

41
後岩津々志 第三回
  • 醒睡笑(承前)
     〜 紫の一本
遺稿 岩田準一44
小咄年表 第四回
  • 落噺 百歌撰(天保5)
     〜 はなし大全(弘化元)
宮尾しげを54
日本史傳川柳狂句 第四回
  • 謡曲諏訪(承前)
     〜 富士の雪(続)
遺稿 岡田三面子64
推薦圖書
 太陰の娘サロメ
80囲
芋小屋だより80下
編輯後記裏表紙裏
お詫び 美和書房裏表紙裏

第六冊
頁数80頁
刊年昭和二十七年八月五日

目次
口絵 伝 池大雅表紙裏
東西好色藏書票 その五 SAKAI
JOHN W.EVANS
1
江戸歌舞伎團扇繪集 五
  • 通b 曾我
  • 若紫根元曾我
  • 一谷嫩軍記組討之圖
  • 花街曲輪商曾我
解説 木村捨三
   宮尾しげを
2
Y字形の民俗 杜 耶麻6
風流放談 柳の葉末 第三夜
  • 藤澤衛彦 山路閑古
  • 中野榮三 芋小屋主人

8
猿も自慰をする 壽々の舎13囲
人の振り見て我が振りなほせ 穿さがし浮世の口眞似14
川柳隱名考(一)
  • まえがき 〜 薄毛(続)

16
艶本類集
  • 女大らく寶開

27
日本艶本目録(四)
  • 逢悦彌誠 〜 小野徒玉莖嘘字盡

42
後岩津々志 第四回
  • 佛語讃嘆 風流嵯峨紅葉
     〜 衆道用文書
遺稿 岩田準一44
小咄年表 第五回
  • 古今秀句落とし噺(弘化元)
     〜 落噺 江戸嬉笑(嘉永3)
宮尾しげを54
日本史傳川柳狂句 第五回
  • 富士の雪(承前)
     〜 お供は武内等
遺稿 岡田三面子62
「穴相撲四十八手」に就いて80囲
推薦圖書
 艶女玉すだれ
80囲
「年中交合故事」と「艶本目録」に就いて 星野長一裏表紙裏
編輯後記裏表紙裏
暑中御伺ひ申上げます裏表紙裏囲

第七冊
頁数80頁
刊年昭和二十七年十月一日

目次
口絵 古代支那繪錢表紙裏
東西好色藏書票 その六 さの字愛暑
MARJONEVA
STJMSON
1
江戸歌舞伎團扇繪集 六
  • 矢の根五郎
  • 時津風入船曾我と九十三騎醋曾我
  • 虚無僧の五郎
  • 鮟鱇無間
解説 木村捨三
   宮尾しげを
2
ワイセツを否定する 森山太郎6
うそくらべ見立評判記2
小股の切れ考 田口二州14
珍稿漫考
  • 堕胎の立會
齋藤昌三17
風流放談 葉末餘滴 岡田 甫19
艶本類集
 しめしこと雨夜の竹かり
21
川柳隱名考(二)
  • 薄毛(承前)
     〜 開帳(続)

29
弁天娘女男白波38
後岩津々志 第五回
  • 初音草噺大鑑
     〜 和漢三才圖絵
遺稿 岩田準一40
小咄年表 第六回
  • 落噺 江戸嬉笑(承前)
     〜 新板 おとし噺(明治元)
宮尾しげを50
日本史傳川柳狂句 第六回
  • お供は武内等(承前)
     〜 吾がせこ(続)
遺稿 岡田三面子60
稀書研究室80
編輯後記裏表紙裏
広告 新板 江之嶋裸形弁財天 寫眞集裏表紙裏囲
   随筆「煙草放浪」裏表紙裏囲

第八冊
頁数80頁
刊年昭和二十七年十二月一日

目次
口絵 古代絵錢・秘戯之泉表紙裏
これは何の繪でせうか?折込別丁
猥褻とは何か? 帆b 煕
江戸小咄6囲
艶本類集
 陰陽 てごとの巻 全
7
新編艶本目録(一)
  • 序・例言
  • 相生源氏 〜 色つくし
長江銓重 編29
珍稿漫考
  • ふたなり異聞
天野一也36
艶本序文集
  • むつの二色氣 花露
  • 艶本婦美車 春情媚談 戀廼七癖
  • 繪本 懷中娘 喜久賀佐彌
  • 實娯教繪抄 繪本妃多智男比
  • 會本邯鄲枕
南名散史38
川柳隱名考 第三回
  • 開帳(承前) 〜 毛巾着
中野榮三29
日本史傳川柳狂句 第七回
  • 吾がせこ(承前)
     〜 倒塔焼佛(続)
遺稿 岡田三面子52
小咄年表 第七回
  • 新板 おとし噺(承前)
     〜 おとし噺 花の笑い窪(明治年間)
宮尾しげを72
編輯後記裏表紙裏
広告 袖珍畫帖 國之華裏表紙裏
   新板 江之嶋裸形弁財天 寫眞集裏表紙裏囲

第九冊
頁数80頁
刊年昭和二十八年六月二十日

目次
熊の皮泉別丁
性に関する説話と傳説 浦山敷香1
提灯と鎭臺シャッポン 魔山人5
艶本質疑 花咲一夫7
広告 女禮讃 二號版8
艶本類集
  • 鳥襷十二双歌合
  • 子犬つれづれ

  • 9
  • 21
「桃源華洞」補遺
  • 地名に現はれた女陰
  • 俗謡
龍王山人31
珍稿漫考
  • 二つの御詔
天野一也48
新編艶本目録(二)
  • 太秦物語
     〜 (艶本)菊の露
長江詮重 編50
日本史傳川柳狂句(八)
  • 倒塔焼佛(承前)
     〜 笛の音、稚児、姥が池(続)
遺稿 岡田三面子60
編輯後記裏表紙裏
広告 袖珍畫帖 國之華裏表紙裏
   柳の葉末裏表紙裏囲

第十冊
頁数64頁
刊年昭和二十八年八月二十日

目次
ばたふらい貼込
江戸歌舞伎團扇繪集 七
  • 門緑常盤曾我
  • 石山源太鬼門破
  • 初花隅田川
  • 鎌倉風新玉曽我
解説 木村捨三
   宮尾しげを
1
艶相雜考 田口二州5
「子犬つれづれ」に就て8囲
広告 色道禁秘抄 全8囲
性的雜音 花咲一男9
熊の皮のこと12囲
艶本類集
  • 艶色二葉源氏
  • 色道無限算開記 全

  • 淫水亭開好
  • 戀川開@

  • 13
  • 21
廢頽大津繪節と露は尾花34
艶本類集
  • 艶姿娯集餘情 雪の巻
楊洲周延36
新編艶本目録(三)
  • 菊重戀姿鏡 〜 逆八相倭文庫
長江詮重 編42
艶本作者戯號抄49囲
日本史傳川柳狂句(九)
  • 笛の音、稚児、姥が池(承前)
     〜 大海人皇子
遺稿 岡田三面子50
編輯後記裏表紙裏
水害御見舞申上ます
暑中御伺ひ申上げます

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